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アーユルヴェーダのツボ

アーユルヴェーダによる診断と経絡を用いた鍼灸治療は独創的かと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
アーユルヴェーダにも中国伝統医学でいうところの「ツボ」の概念があり、それを「マルマ」と呼びます。
またマルマに鍼を用いる治療も存在し、「スチ・カルマ」と呼ばれます。スチは鍼、カルマは行為を意味します。
ここではこれらの概念に加え、中国伝統医学の経絡経穴との違いや、当院の考え方についてまで、ご紹介いたします。

アーユルヴェーダのツボ「マルマ」

マルマとは「傷つきやすい」あるいは「敏感な」ゾーンという意味です。
『改訂 アーユルヴェーダとマルマ療法』の本を参考に、マルマの定義をご紹介いたします。

マルマの定義

1.筋肉、静脈、靭帯、骨、関節が交わる場所。

2.重要な神経が筋肉や腱のような関連の組織と合流する場所。または痛む場所や異常な脈拍が出ている場所。(解剖学上の構造に関係なく、反応のあるところはマルマとなる)

3.3つのドーシャ(3つの体質 ヴァータ・ピッタ・カファ)と3つのグナ(3つの心 サットワ(浄性)・ラジャス(激性)とタマス(鈍性))その他エネルギーと一緒に存在している場所。

4.傷ついたら死を招きかねないもの。

2と3がとても重要で、マルマは心と体に影響を与える反応点であることを意味しています。
またマルマはマイナスの感情や神経の緊張が溜まりやすい部位とも言われ、マルマを整えると精神面も整えることができると考えられています。これは中国伝統医学の経絡とも考え方が一致しています。
ただし中国伝統医学の場合は、心身をコントロールしているのは五臓であり、その五臓の病変が反映されるのが経絡・経穴(ツボ)なので、「五臓」という存在がワンクッション置いている点で異なります。

マルマの特徴

1. 全身に107存在する

[経穴とマルマの違い]
中国伝統医学の経穴(ツボ)は全身に361存在するとされているので、個数は中国伝統医学に比べてかなり少なくなります。
場所は経穴と一致する点もありますが、重要な経穴とされる部位と一致するものはほとんどなく、どちらかというと対症療法的に経穴を用いる際に使われる箇所が、マルマの部位となっております。マルマは「敏感な」という意味があるとされている通り、痛みなどの反応が出やすい部位が指定されています。重要な経穴とされる部位は一般的に痛みなどの敏感な反応点としては出にくく、皮膚の張りのなさなど、本人が気づきにくい皮膚変化として現れます。
手足末端に存在する重要な経穴は、心身を主る五臓に直接働きかけて全身調整を図ったり、経絡の流れを利用して局所に触れずに遠隔的に働きかけて症状の改善を図れるなど、かなり特殊な反応点になります。ツボの数はアーユルヴェーダの3倍以上あり、経絡はかなり細かくルートが決められ、多数の作用を持つ経穴を見出してきた中国伝統医学の方が、ツボによって人体に働きかける点では圧倒的に詳しいのかもしれません。

2. 精妙な脈管である「ナーディ」と繋がっている

マルマは精妙な(目に見えない)脈管である「ナーディ」と繋がり、ナーディは人体のエネルギーの中心と言われる「チャクラ」と繋がっています。
チャクラは会陰(肛門と生殖器の間)・へそ・心臓・咽喉・眉間・頭頂と6つ存在し、全身にエネルギーを供給しているとされます。ナーディは全身に14本存在し、チャクラと連結し全身にエネルギーを運びます。マルマはナーディから発達した敏感な領域で、ナーディから更に身体全体へとエネルギーを行き渡らせる役目を持っています。

[アーユルヴェーダと中国伝統医学のエネルギーの捉え方]
アーユルヴェーダではエネルギーの発生ポイントは6つのチャクラです。
中国伝統医学では心身を主るのは五臓であるので、エネルギーの発生ポイントは五臓であると言えます。ただし五臓の場合は「気・血・津液」によって機能しているとされているので、五臓はエネルギーにあたる「気」以外にも、物質的な血と津液(体液)の生成と運搬を主っています。
ちなみに気・血・津液にそれぞれの脈が存在し、気は経脈、血は血脈、津液は三焦を通るとされます。

経脈とナーディの違い

エネルギーの流れる脈がアーユルヴェーダでは14本あるナーディとされますが、中国伝統医学では14本(正経12+督脈、任脈)の経絡となります。
経絡はかなり細かく構成されており、正経十二経という五臓六腑と関連する経脈の他に、五臓六腑と関係しない経脈の奇経八脈など、色々な経絡が存在します。ここで14本と書いたのは、完全に経穴が独立した経脈が14本あるということで書かせていただきました。他の経脈は正経の中にある経穴によって構成されているので、省略しました。

それに対してアーユルヴェーダのエネルギーの脈であるナーディはかなり大雑把です。例えば心臓に位置しているアナーハタ・チャクラに所属するヴァルナ・ナーディは「脊柱基底部から心臓のチャクラに達し、そこから全身の隅々に。呼吸系・循環系・および皮膚によって全身にプラーナ(エネルギーのこと)を供給。」とあり、とてもざっくりしてます。

アーユルヴェーダと中国伝統医学のエネルギーと肉体の捉え方

アーユルヴェーダはチャクラ、ナーディ、マルマを通してエネルギーの流れのみを説明しています。
人体は五大元素よって出来ている粗雑なもので、精妙なエネルギーを整えることで結果的に粗雑なものをも整えるという考え方が強くあります。エネルギーの流れが細かく書かれていないのは、エネルギーを強く物質(肉体)に結び付けて考えていない表れと言るかと思います。
中国伝統医学は五臓が心身を主ると考えることで、エネルギーだけでなく肉体もかなり重要視しています。そのためエネルギーは「気」で説明し、肉体(物質)は「血」「津液」によって出来ていると考え、肉体面の説明も細かく入ります。
それではアーユルヴェーダは肉体面の説明が苦手かというとそうではなく、トリ・ドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カファの3体質)によって解かりやすく的確に捉えることができます。(詳しくは「体について」をご覧ください。)

私は、トリ・ドーシャの考え方の方が応用が効きやすく、広く構えて捉えることができるので扱いやすいと思っております。

当院ではなぜ経絡経穴を採用したか

ここまでお話した通り、中国伝統医学の経絡経穴の方が細かく人体と結びつき、作用を分析しているため、鍼灸を用いた治療の際は中国伝統医学の方が扱いやすいのです。
そのため当院では治療の際は中国伝統医学の考え方と手段を採用しています。
ただし生理面の捉え方はアーユルヴェーダの方がわかりやすいために、問診などで患者さんを診る際はアーユルヴェーダを採用しております。

しかしアーユルヴェーダのマルマに対する考え方、エネルギーに対する考え方はとても参考になるところがあるので、一部取り入れさせていただいております。

治療者のエネルギーの重要性

先程書かせて頂いた通り、アーユルヴェーダでは肉体よりもエネルギーを重要視します。
アーユルヴェーダではこのエネルギーを「プラーナ」と呼びますが、このプラーナの力が強ければ強いほど、施術効果が高まると考えられています。
優れたアーユルヴェーダ医師は、自身のプラーナを磨く努力をし、自身のプラーナの力だけでマルマ・ポイントを治療できるそうです。そのためプラーナが強い施術者は、施術時間が短かったりマルマ・ポイントが多少ずれていたりしても高い治療効果を発揮できると言われます。
逆にプラーナが未熟な施術者は正確にマルマ・ポイントを捉えたり、施術時間が長かったとしても前者よりも高い効果が出せないと言われております。

プラーナは愛と意識のエネルギーを運ぶとされ、マルマはマイナスの感情や神経の緊張が溜まる場所とされるので、慈悲深い施術者こそがプラーナが強く、マルマ・ポイントを治せる施術者だと考えております。
昔から施術者の人格の重要性は説かれておりました。これは接し方のみならず治療効果に直結するものだと、先人の方々は知っておられたのだと思います。
私自身、人格の向上が治療効果にも影響を与えるのだと意識して努力したところ、確かに治療効果が高まり、それが自信に繋がりました。
人格が高まることで人との接し方も変わり、治療効果も高まりました。「基本は人格にあり」と心に刻み、今も努力しております。

プラーナや気といった概念は変わった修行法で高めるものではなく、清き人格に自ずと身に付くものと、私は考えております。

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